INTERVIEW
2021.07.05

Sho Asakawa(PLASTICZOOMS)とファッション|後編「ファッション性と音楽性と人間性」

Sho Asakawa(PLASTICZOOMS)とファッション|後編「ファッション性と音楽性と人間性」
インタビュー・編集・撮影:Kaiki Tsuchie

PLASTICZOOMS
PLASTICZOOMSはフロントマンSho Asakawaを核とした音楽とファッションを同列に捉えるプロジェクト。
DIY精神に拘り続け、全世界を視野に入れ活動する姿勢は、バンドとしても全く新しい立ち位置を確立している。

70’sPunk、80'sPost Punk、New Wave、Gothicなどコアな音楽をルーツに持ちつつも、常にアップデートし続ける楽曲・日本人離れしたサウンドセンスは東京のシーンのみにとどまらず国内外からも多くの反響を得ている。
2015年6月からは1年間ドイツ・ベルリンに拠点を移し、自主企画やヨーロッパ5か国でのライブツアーを経て、2017年には10ヶ国21公演に及ぶ香港+ヨーロッパツアーを成功を収めた。
また、ファッションアイコンとしての人気も集めており、音楽家以外のアーティストからの評価・ラブコールも多く、数多のコラボレーションを実現してきた。
東京コレクションブランド『DISCOVERED』や、アクセサリーブランド『JAM HOME MADE』、メンズファッションブランド『Shinya yamaguchi』とのコラボレーションアイテムを発表するほか、2011年に写真家・荒木経惟氏の撮影により、アートブック『The Reality Show No.2』へのモデル出演、パリコレブランド『JIL SANDER』とのコラボレーション、CMへの楽曲提供を果たした。
Sho Asakawa個人でも、リアルなユースカルチャーに寄り添ったファッションブランド『VENUS ECCENTRIC』のデザイナー、 そして中野ブロードウェイに店舗を構えるブランド『PAYS DES FEES HOMME』のディレクター、 更に創造の枠にとらわれないアートプロジェクト『MODULATEST』のメンバーとして活動している。
【関連インタビュー】
終わりが悲しいとは思わない PLASTICZOOMSインタビュー(CINRA)
服を作るパンクな音楽家 PLASTICZOOMSインタビュー(CINRA)
インタビュー前編はこちら
05

ずっと長く着れるものが本当に美しい服

── 僕もこれまでのポップアップに何度かお伺いし、MODULATESTではショルダーバッグ、PAYS DES FÉES HOMMEではシャツを購入しました。

どちらも買うときにShoさんから「家で丸洗いできます」と説明いただき、特にカバンの方は「え、丸洗いできるの?!」と驚いた記憶があります。

一方ハイブランドの高いシャツって、家庭での洗濯不可なものも多い印象です。

SHOさんにとって、簡単に洗える、長く使えるというのは、どのような意味合いがあるのでしょうか?

MODULATESTのショルダーバッグ、PAYS DES FÉES HOMMEのシャツ(土江着用)
Sho:自分の価値観ですが、ずっと長く着れるものが本当に美しい服だなと。

服も音楽も一緒で、ずっと流行り廃りなく着れる・聴けるようなものが好きですね。 自分の作る服・音楽は、一生その人の人生の"タンス"の中にあって、ふと思い出したときに着れたり・聴けたりするものであってほしい。

服に関しては“物”なので、シワがつきにくいからそのまま着れるとか、痛みにくいから洗濯しても大丈夫とか、そういうところを大事にしたいですね。


── なるほど。
あとは絶対的に古着。古着の良さを今にアップデートした服を作ります。

今のTシャツで30年後にもカッコよく残れるのってかなり少ないと思っていて。

今と昔とで生地が全然違うんですよね。いつか捨てるものとして作られている感があるのはすごく嫌ですね。

これなんかは95年のHOLEのヴィンテージTシャツなんですが、クオリティがやばいんです。生地も綺麗だし形もプリントの乗り方も完璧で、こういうものが世の中にまだ残っているという事実。
HOLEのTシャツ
自分が今後作っていきたいものは、こういった残っていくものですね。着倒されているんだけど綺麗、ボロボロになったとしてもカッコいい。むしろボロボロになることを想定してデザインしています。
例えば誰かに自分の服を譲るってなったときに、これ君の方が似合うからあげるよって、カッコいい状態で渡せる。お古を渡すのではなく、カッコいい状態でもらったら嬉しいんですよね。それは自分の人生の中に何度もある体験で。

── 味ということですね。劣化というよりも変化というか。
そうそう。布ってそういうところに存在しているので。洗って色落ちしても、生地の良さが出たりするので、そういうのにめちゃくちゃこだわります。

シルエットも日本人に向けて作っているので、身長、性別関係なしに似合うものをかなり意識していますね。

人のライフスタイルの中に残り続けるものを作るというのが、すべての創作の根幹にあります。
06

カート・コバーンからの影響

── いつからそんなにヴィンテージ好きになったんですか?
Sho:ヴィンテージ好きになったきっかけは、母親の影響が大きいです。「古着屋さんに良い物が揃ってるから、古着を見に行ってみたら?」って言われて、小学校5年生くらいのときに古着屋に初めて行きました。

── めちゃくちゃ早いですね(笑)
Sho:最初はデニムから入って、そのあとアメカジ、それからヨーロッパの古着にハマって。
あと古着に関してはNIRVANAのカート・コバーンからの影響が大きいですね。

カートの古着のチョイスがうますぎて。バンドTシャツを1年中着たいからカーディガンを着る。で、暑かったら脱げて温度調整もできる。ボロデニムの下にはサーマルのレギンスを履いて、これも暑かったら脱ぎゃいいでしょっていうスタイル。

本当にファッションでライフスタイルと自分のアイデンティティーを両立できていて。そういうところで、カートにはめちゃくちゃ影響を受けています。

このHOLEのTシャツも、HOLE自体大好きだけど、カートも着ていたから、カートと同じものを着たいっていうのもありますね。
カート・コバーン(出典:MTV)
── カート・コバーンからの影響もそんなに大きかったんですね。過去のインタビューを読むとヴィヴィアン・ウエストウッドとかからの影響が大きいのかなと思っていました。
Sho:もちろんベースとしてヴィヴィアン・ウエストウッド、マルコム・マクラーレンとかはファッション的にはすごくデカいです。

あの人たちが作ったものの上で、自分が好きなものは何かを考えたときに、ヴィンテージ物というのがあって。で、ヴィンテージ物に関してすごく影響を受けたのがカート・コバーンです。

あとヴィンテージTシャツで面白いのがサイジングですね。Tシャツのサイズはその時代を象徴していて。70sなら小さめだし、80sなら丈が短めだし、90sなら大きめだし。で、Tシャツのサイズ感によって、パンツのシルエットも変わってくる。スキニーなのか、ワイドなのか、フレアなのか。 そういったサイズと時代感にもPLASTICZOOMSはこだわっていきたいですね。
今回のアルバム(Wave Elevation)で言うと、70年代のパンクをベースに、80年代のニューウェーブやポストパンク、90年代オルタナの流れっていうのも要素として入っていて。イギリスのSTONE ROSESやPRIMAL SCREAMの影響も今回のアルバムはてんこ盛りですね。

新作のMVでは、そういった背景のカラーやサイジングを意識したコーディネートにしていて、それを見てくれた方が「こういう着方をしたいな」って思ってもらえたら嬉しいですね。

── 音楽も服も全部リンクしているんですね。

1つお聞きしたいのが、Shoさんの一般的なファッションイメージって“真っ黒”だと思うんですけど、最近ShoさんのInstagramを見ていると、結構明るいカラーであったり、暖色系の服を着られているなと思っていて。

それはPLASTICZOOMSの今の音楽性も影響しているということでしょうか?

Sho:影響していますね。音楽性もそうだし、今自分の住みたい、空気を吸いたい場所のムードと、自分の作りたい服の色が全部リンクしています。
基本的にすべてが愛でできているんだって思うようになってから、じゃあ愛って何色なんだろうってなったときに、赤だけじゃないなと。そこにフォーカスしていくと、今まで選んでいた真っ黒だけじゃなくなってくるというか。黒に合うものを選ぶようになりました。
Sho AsakawaのInstagramより
07

本当に服が好きで、めちゃくちゃ服を買ってきたからこそ、みんなにこれいいよって薦められる

── 僕もバンドTシャツが大好きでいつも着ているんですけど、バンTは自分のファッション性を押し上げてくれる側面があるなと思っていて。

普段自分が着るテイストとは違うんだけど、好きなバンドだから冒険して買ってみるかと。で、私服として着てみると、思いの外似合って、周りに褒められたりして。

自分のファッションの殻を破ってくれるような存在になっているなと。結果それが自分のファッションになって、個性につながる。

バンドが自分を一歩オシャレにしてくれるというか。そういうところがバンTの魅力の1つだと思っています。

そういう意味合いでPLASTICZOOMSさんのファンは、音楽とファッション双方から影響を受けている方が多いんじゃないかなと。

Sho:そうですね。自分達には音楽的にもファッション的にも入り口がたくさんあるというか。掘ったら掘っただけ面白い世界があるという状態が理想で。

掘らなきゃわからない世界に魅力を感じてきたからこそ、自分もそういった世界を作れたら楽しいですね。

10年以上やってるバンドだからこその入り口の多さと、あとは安心してドアノブを回せる感はあると思っています。

ファッションに関しては、本当に服が好きで、めちゃくちゃ服を買ってきたからこそ、みんなにこれいいよって薦められる。そこは安心して付いてきてほしいなと思っています。


── まさにそういう信頼感がPLASTICZOOMSさんにはあると思います。
Sho:あと最近気付いたのが、僕が影響を受けている人ってみんなめちゃくちゃベーシックスタイルなんですよね。で、それをどう着るかでカッコよさが生まれている。結局の話、人間なんですよ(笑)。

さっき話したカート・コバーンであったり、今のバンドだと、DIIVのザカリー・コール・スミスとか、Pretty Sickのサブリナちゃんとか。

ザカリー・コール・スミス(出典:Getty Images)
サブリナ・フエンテス(出典:NO AGENCY)

服がカッコいいっていうより、もはや何を着てもカッコいい。

この人たちがカッコよく見えるのは、中身があるから。インスタでその人たちのライフスタイルとか、人生とかを垣間見ることができて、よりカッコよく見える。

そういう意味でアーティストは、ちょっとナルシスティックになることが重要な気がしていて。

人間性を含めたファッションのカッコ良さが、その音楽もさらによく聴こえさせるんじゃないかなと思っています。

08

バンドTシャツは自分を表現してくれるもの

── 最後に、ShoさんにとってバンドTシャツとはどのようなものでしょう?
Sho:バンドTシャツは自分を表現してくれるものだと思っています。Tシャツの柄、バンドのカラーを借りて、自分をPRアピールできる。で、そのバンドにとってもPRになる。
ただ、バンドがカッコよくないとTシャツもカッコよく見えないし、着る人もカッコよくしてくれない。

ということは、責任重大なんですよ、バンドって。なので音楽のクオリティーをとことんまで突き詰めて、デザイン性も伴えば、バンドとしての価値が出てくるのかなと思っています。

そういう意味で、自分にとってもバンドTシャツは絶対的なキーですね。

あと、バンドTシャツは分かる人から見たら一発で説得力につながる。「分かっているな〜」と。

で、そういう人とは話が早い。バンドTシャツって友達を作ってくれるんですよ。好きなものが近い人間と出会いやすくなる。そこもバンドTシャツの大きな魅力ですね。

後書き①

Shoさんから2006年製のPrimal ScreamのロンTを譲り受けました!!!

プリント感、サイズ感、生地感、どこをとっても最高にカッコいい1枚!

一生の宝物にします!

後書き②

『SHO ASAKAWA from PLASTICZOOMS

VINTAGE T SHIRT COLLECTION』

Sho:集めているVintage Tシャツコレクションの一部を紹介します。

どれも大好きで思い入れのあるバンド、アルバム、カルチャーの物です。

① Primal Scream
  90s Vintage “Screamadelica” T

Sho:僕の人生にかなり大きな影響を与えてくれているPrimal Screamの1991年にリリースした名盤“Screamadelica”。

どうしてもオリジナルのサイズXLを手に入れたくて探し続け、やっと理想のコンディションで手に入った一点。

音と同じく思い入れの深いTシャツです。

② Thunderdome
  90’s Vintage “Dance Or Die” Long Sleeve T

Sho:オランダのハードコアテクノ/ガバ レーベルThunderdome Recordsが1996年にリリースした“Best Of 96 Limited Edition Collectors Box”の中に同梱されていたというシャツ。

このコンピはシリーズ化されていて、当時毎回素晴らしいデザインのアイテムが入ったBOX SETを限定リリースしていますが、この年のデザインは別格にカッコいい。 宝物です。

③ DEPECHE MODE
  90’s Vintage “The World Violation Tour”T

Sho:90年にリリースされた、デペッシュで僕が一番好きなアルバム“Violator”のツアーT。

前のオーナーが袖と裾のステッチを解いているため、縫穴が広がってホール多数ありますがボロTが大好きな自分にとっては100点です。

このギリギリなデザインとヨーロッパ製の薄くて軽い生地がたまりません。

④ Pink Floyd
  1987 Vintage “USA Tour”T

Sho:Pink FloydのVintage Tシャツは魅力的なデザインが豊富なのとプリントのクオリティーが本当に高い物が多いのですが、個人的にこのデザインが一番好き。

プリントの位置やシルクスクリーンのサイズが完璧で、ハイウエストパンツにインした時に最高の位置にきます。 87年製。

⑤ The Stone Roses
  90’s Vintage “Second Coming”T

Sho:前オーナーがUKのコレクターから引き取ったという衝撃の一点。

Geffen Recordsのロゴも入っているオリジナル。

当時レコードショップのスタッフに店頭で着るよう配られた非売品の可能性が高いです。

自分のコレクションの中で一番レアな物。