INTERVIEW
2021.06.28

Sho Asakawa(PLASTICZOOMS)とファッション|前編「ブランドとバンドの服作り」

Sho Asakawa(PLASTICZOOMS)とファッション|前編「ブランドとバンドの服作り」
インタビュー・編集・撮影:Kaiki Tsuchie

PLASTICZOOMS
PLASTICZOOMSはフロントマンSho Asakawaを核とした音楽とファッションを同列に捉えるプロジェクト。
DIY精神に拘り続け、全世界を視野に入れ活動する姿勢は、バンドとしても全く新しい立ち位置を確立している。

70’sPunk、80'sPost Punk、New Wave、Gothicなどコアな音楽をルーツに持ちつつも、常にアップデートし続ける楽曲・日本人離れしたサウンドセンスは東京のシーンのみにとどまらず国内外からも多くの反響を得ている。
2015年6月からは1年間ドイツ・ベルリンに拠点を移し、自主企画やヨーロッパ5か国でのライブツアーを経て、2017年には10ヶ国21公演に及ぶ香港+ヨーロッパツアーを成功を収めた。
また、ファッションアイコンとしての人気も集めており、音楽家以外のアーティストからの評価・ラブコールも多く、数多のコラボレーションを実現してきた。
東京コレクションブランド『DISCOVERED』や、アクセサリーブランド『JAM HOME MADE』、メンズファッションブランド『Shinya yamaguchi』とのコラボレーションアイテムを発表するほか、2011年に写真家・荒木経惟氏の撮影により、アートブック『The Reality Show No.2』へのモデル出演、パリコレブランド『JIL SANDER』とのコラボレーション、CMへの楽曲提供を果たした。
Sho Asakawa個人でも、リアルなユースカルチャーに寄り添ったファッションブランド『VENUS ECCENTRIC』のデザイナー、 そして中野ブロードウェイに店舗を構えるブランド『PAYS DES FEES HOMME』のディレクター、 更に創造の枠にとらわれないアートプロジェクト『MODULATEST』のメンバーとして活動している。
【関連インタビュー】
終わりが悲しいとは思わない PLASTICZOOMSインタビュー(CINRA)
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3つのアパレルブランドの始まりについて

── まずはじめに、3つのアパレルブランド「VENUS ECCENTRIC(ヴィーナスエキセントリック)」「PAYS DES FÉES HOMME(ペイデフェオム)」「MODULATEST(モデュレイテスト)」について、それらの始まりと、Shoさんの関わり方について教えていただけますでしょうか。
Sho:最初に始めたのはVENUS ECCENTRICで、学生時代の22歳の頃に作ったブランドです。PLASTICZOOMSが始まる前ですね。

その頃はブランドという形ではなく、自分でアクセサリーを作って友達に売っていました。で、欲しいと言う人があまりにも多かったので、ブランド名をつけようとなり、大好きなイギリスのパンクバンド「Neon Hearts」の77年のシングルB面タイトルから名前をつけました。

始めた頃はもう少しフェティッシュ的でSMの要素が多かったですね。レザー、エナメル、金具に取り憑かれていました。実際、本当にそういった趣味嗜好の方のオーダーメイドで作ったりもしていましたね。

ずっとアクセサリーを作っていたんですが、元々グラフィックを作ることも好きだったので、プリントしたいなという気持ちから、PLASTICZOOMSと並行して服も作るようになった感じです。

しばらくバンドとVENUS ECCENTRICの両輪で活動していく中で、PAYS DES FÉESというレディースブランドの社長のLimさんと知り合いました。

以前、PAYS DES FÉESの中で、僕が着たいなと思う柄のシャツがあって「これメンズないの?」とか言っていたら、数年後にLimさんから「メンズのディレクターやらない?」という話をもらって。それで「面白そう、やりたい」と即答したのが、PAYS DES FÉES HOMMEの始まりです。

それから初めてのコレクションはラフォーレ原宿でのPOP UP SHOPで、それが成功して、どんどんディレクションをしていくようになりました。

MODULATESTは東京モード学園卒業の同級生と始めたプロジェクトです。同級生とまだクリエイティブをやったことがないなとベルリンにいる間に思って。「アートに振り切ったことを一緒にやらない?帰ったらすぐミーティングしよう」と声をかけました。
Sho Asakawa
02

ブランドコンセプトについて

── それぞれどのようなブランドコンセプトなんでしょうか?
Sho:VENUS ECCENTRICのコンセプトは、今と過去のユースカルチャーをミックスさせた、2年後を目掛けたデザインです。

アンダーグラウンドなものをモチーフにしていて、海外のクラブや街で見ためちゃくちゃおしゃれだと思った人たちがモデルイメージです。国外で見た感覚、受けた刺激、空気感を服に落としこんでいます。着る人の醸し出す雰囲気をいかに引き出せられるか、空気感ありきのブランドです。

VENUS ECCENTRIC

一方、PAYS DES FÉES HOMMEのコンセプトはクラシックです。

このブランドのディレクション、デザインで一番大切にしていることは「背景」。これは社長と共通認識で常に土台にしていることですね。 “たかが〜されど〜”というか。アイテム1つひとつにどういった音楽的背景を持たせられるか。

そして、その音楽背景に選んだ年代やバンドが着ていたアイテムを実際に手元に集めてパターンを見ながら今の時代のテンションに良いバランスで落とし込む作業に徹しています。

縫製にもこだわっていて、動きに強い軍服の縫製を基本的に採用しています。

PAYS DES FÉES HOMME

VENUS ECCENTRICがラフに着れる服なら、PAYS DES FÉES HOMMEは、よりドレッシーな立ち位置。

VENUS ECCENTRICはそのまま寝てOK、パジャマにしてもらってもOK。ボロボロにしてもカッコいい服。適当に着て目を引く。スーパーやコンビニに着て行ってカッコよかったら良いでしょ?的なデザインがVENUS ECCENTRIC。

PAYS DES FÉES HOMMEは、デートとか特別な日とかに着ていくイメージ。良いレストランに行っちゃう感じ。

で、MODULATESTは創造の枠にとらわれないクリエーションを世の中に発信していくクリエイター集団の活動です。

卒業後経験を積んだ個々のクリエイターがプロとして物づくりをしていく過程が本当に面白くて。1回目は服を作ったのですが、それぞれのこだわりが強い分時間はかかりましたが楽しかったですね。サイズや空気に無理やり感が出ないように、日本人の平均をちゃんと見て、機能性もすごく重視しました。

MODULATESTがデザイン・企画するものは服に限りません。何でも良い。作りたいもの、面白いもの、今求められているもの、求めてほしいもの、フォーカスしてほしいポイントを打ち出せられれば良くて。

ただこれは、仕事というよりアートプロジェクトなので、不定期でタイミングがあったときにやっていきます。絵を3〜4年かけて描いていくのと同じイメージですね。

MODULATEST
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PLASTICZOOMSは服と音楽を同列に捉えるプロジェクト

── PLASTICZOOMSのバンドグッズについてはいかがでしょうか?
Sho:自分のブランドをやっているからこそ、手抜きできない立ち位置ですね。
今かなり価格が高騰しているNIRVANAや、Nine Inch NailsのTシャツは、当時会場で売られていたものなのに、今見てもめちゃくちゃカッコいい。

大切なのはやっぱり生地です。なので、PLASTICZOOMSのTシャツはボディも慎重に選んでいるし、オリジナルのボディを作ることもあります。お客さんの着る服装を想定して着丈とかもすべて計算している。

時にはブランドよりもアホなことをしてしまっているのがPLASTICZOOMSのグッズですね。

例で言うと、アクセサリーブランドのJAM HOME MADEさんとのコラボネックレスとか。

シルバーのPLASTICZOOMSのロゴが箱に入ってて、箱を開けてネックレスを見て喜んでもらえるようにしていて。

全部の過程に意味がある。例えば好きなブランドとかだと、ショッパーでもらってその瞬間から嬉しいでしょ?それをバンドのグッズでも味わってほしい。

JAM HOME MADEとのコラボレーションネックレス

あとは、Shinya yamaguchiというブランドとのコラボブーツもPLASTICZOOMSとして出しました。

メンズのヒールブーツを履くという文化がそこまでなかった時期に出したブーツです。

アルバムのリリース日から予約開始で、タワレコにブーツが並んだんですが、前代未聞らしくて(笑)。

そういうことができるPLASTICZOOMSが面白いって思ってもらえたなら良かったなと。

Shinya yamaguchiとのコラボレーションブーツ

元々、PLASTICZOOMSは服と音楽を同列に捉えるプロジェクトなので、どっちのクオリティもすごく求められるし、手抜きができない。

なので、リリースまですごく時間がかかる。ツアーのたびに曲やグッズをたくさん出せるのは羨ましいとは思うけど、自分達はそれができなくて。

どういう風にしたらこれがもっと良くなるのか、インクの乗り方だったり、サイジングだったり、プリントの位置だったりを、毎回時間をかけて考えています。

04

ビジネスとかは一旦置いておいて、音楽とファッションが純粋に好きで、それらの理想をいかに形にできるかをみんなで話し合う

── 僕もPLASTICZOOMSさんのTシャツを何枚か持っていますが、どれもデザイン、シルエット含めとてもこだわりを感じますね。
Sho:単純に音楽って楽しむもので、それに携わるものも面白くないと成立しないと思っています。

服と音楽をなぜ同列に並べるのかというと、すごくカッコいい音楽を聴いたときの衝撃と、“この服欲しい”と思ったときの感覚が自分の中でかなり似ているからで。

生み出す部分でも、「絶対良い曲作りたい」という気持ちで作った曲が完成したときの喜びと、頑張って作った服に自分で袖を通したときの感動が似ているんです。 子供の頃からずっと変わらず、この感覚が自分のライフスタイルの中にあるというか。

周りから「うまいことやったね」と言われることが結構あるんですけど、うまいことやってないです。シンプルに、好きを形にするためにどうすれば良いかしか考えていなくて。

ビジネスとかは一旦置いておいて、音楽とファッションが純粋に好きで、それらの理想をいかに形にできるかをみんなで話し合う。

突き抜けていかないと意味がなくて。誰もやっていないことをやる。誰かが既にやっていたらやらない。普通の人が考えたら「お前バカだろ」ということでも、それが正解だと。それが後で面白くなる。

「そんなことやってたの?」って2年後とかに突っ込まれたりすると、めちゃくちゃ気持ちいいですね(笑)。

見たことがないものってみんなアレルギーがあって、そういうものをPLASTICZOOMSは先陣切ってやっていきます。そこに怖いとかはないですね。 だからそういう意味で、PLASTICZOOMSという場所は僕のクリエイティブすべてにリンクしています。

── そういえば、何年か前にインスタライブでファンの方々とグッズ会議されていましたが、どのような経緯で実施されたのでしょうか?
Sho:会場とかで「あれないんですか?」「これないんですか?」「こういうのが欲しいです」って言ってくれるファンの方が結構いて。で、それってすごくありがたくて。自分達もそこは盲点だったわ、みたいな。だったらみんなで会議しちゃおう、という流れです。

その会議で出してくれたアイデアをもとにして、変化した今の時代に合った生きていくために必要なものや、あったらちょっと毎日ハッピーなものなど、そういうライフスタイルに寄り添ったものを今後出していけたらなと思っています。そのための会議も近々ファンの皆さんとまたしたいですね。

ファッションの業界でもやっているからこそ、生産の瞬発力はあって、そこから実際に実現するものもあります。普通のバンドだと、ブーツ作りたいってなっても、どこに頼めば作れるの?ってなると思うし。

ファンとのグッズ会議で制作したフーディー

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