INTERVIEW
2021.05.19

バンドグッズをファッションへ ー Bandmerchが目指すグッズのあり方|前編「見せ方の重要性」

バンドグッズをファッションへ ー Bandmerchが目指すグッズのあり方|前編「見せ方の重要性」

土江 海輝(ツチエ カイキ)
ファッション×音楽メディア『Bandmerch(バンドマーチ)』の代表。新卒でファンクラブ運営会社に入社し、4年間FCディレクターを担当。2021年4月に独立し、バンドマーチ合同会社を設立。

01

まるでバンドのグッズ担当かのように

── まずはじめに、簡単な自己紹介をお願いします。
Bandmerch代表の土江海輝です。今年で30歳になります。奈良で生まれ、大阪で大学生活を過ごし、社会人になるタイミングで上京してきました。新卒ではファンクラブ会社に入社し、様々なアーティストのFCサイトやECサイトの運営に携わりました。
趣味がバンT(=バンドTシャツ)収集で、国内外のものを合わせて200枚ほど持っており、夏場はほぼ毎日バンTを着ています。

ファッションカルチャーとして、海外バンドのヴィンテージTシャツは既に広く根付いていますが、日本バンドのTシャツはまだまだ浸透していません。なので、日本のバンTをファッション的観点でもっと世に発信したいと思い、今年4月に独立し、Bandmerchという会社を作りました。

土江着用のバンドTシャツ
── ありがとうございます。では、Bandmerchの事業内容を教えてください。
Tシャツをはじめとしたアパレル系バンドグッズに対し、「制作」「デザイン」「宣伝」「販売」すべてのサポートをします。

つまり、バンドに特化したグッズ制作会社であり、デザイン会社であり、メディアであり、通販会社である、といったイメージです。

ただ一般的なグッズ制作会社のような、グッズを納品して終わり、といった関わり方ではありません。

グッズを作る前にデザインを相談し、グッズを作った後に宣伝、販売もする、そういった全方位的な関係性を目指しています。

まるでバンドのグッズ担当かのように、どうすればグッズを1つでも多く売ることができるのかを、バンドと共に試行錯誤していけるような存在になりたいです。

グッズを作りたいけど作る時間がない、売れる見込みがないから作れない、そのようなバンドに特に利用してもらいたいですね。

現時点では「デザイン」「販売」に関してはまだ準備中の段階で、「制作」「宣伝」のみのサポートとなります。
Bandmerchの事業内容
02

グッズからそのバンドの存在を知る

── 現在サポートされている「制作」と「宣伝」についてはどのような特長があるのでしょうか?

はい。まずは現在のBandmerchのメイン事業である「宣伝」からご説明します。

ファッション×音楽メディアとして、オシャレなバンドグッズをピックアップして、サイト内で発信しています。
Bandmerchのメディアポリシーは、着用写真のみを掲載することです。

一昔前と異なり、最近のバンドグッズは私服として使えるようなファッション性の高いものが多くなってきています。デザインが良くないとグッズが売れなくなったからです。

そのため、グッズデザインにこだわりを持つバンドは増えてきたのですが、グッズ告知に力を入れているバンドは少ないように感じます。 イメージ画像だけしか載せていなかったり、楽屋でパッと撮ったような着用写真しか載せていなかったり。せっかくこだわって作ったのに、その良さを最大限に伝える工夫をしていない。すごくもったいないことだと感じています。


── 確かにイメージ画像だけだと、実際のプリント感とかサイズ感が分からず、通販でのグッズ購入を躊躇する場面もありますね。買ってみたけど、イメージと違っていたなんてこともあります。
そうなんです。
ライブハウスの物販で実物を見てもらえる場合はまだ良いのですが、今はリアルで販売しづらい状況なので、そうなると、買う側にとってはオンライン上での紹介画像しか判断材料がありません。
であれば、見せ方にもこだわった方が絶対良いですよね。

いかに写真で目を引かせられるか。いかに着ているイメージを持たせられるか。いかにグッズの良さを最大限に伝えられるか。 そういった意識がバンド側に広がれば良いなと思っています。

そしてBandmerchは、そこのプロデュースをやっていきます。

THE PLANET WE CAN SEEの着用写真(Bandmerch撮影)
── バンドグッズの魅力をより大きく伝えるために取り組んでいることは何ですか?

まず、写真にはこだわっています。

僕自身カメラマンとしても活動しており、Bandmerchでは、グッズ着用写真の出張撮影をやっています。グッズの良さがより引き立つ場所を予め調査し、主にバンドメンバーの方をモデルに撮影します。そこからバンド側の希望するイメージに近づぐよう写真をレタッチし、OKが出たらBandmerchサイト上に掲載します。
例えばMississippi Khaki Hairというバンドのグッズ撮影のときは、クジラの骨のデザインだったので、骨組み感のある背景を探しました。バンドのイメージが黒なので夜に撮影にし、レタッチはマットでダークな感じにしました。
Mississippi Khaki Hairの着用写真(Bandmerch撮影)
── サイトもすごくオシャレですよね。

ありがとうございます。

デザインコンセプトは “ファッション誌のようなサイト” です。 Bandmerchに載せることで、オシャレなグッズがさらにオシャレに見えるようにすることが目標です。今後もっとサイトデザインはブラッシュアップしていきたいですね。

よりオシャレに見せることでグッズをチェックしてもらい、その流れでバンド自体に興味を持ってもらうことを狙いとしています。つまり、「グッズからそのバンドの存在を知る」という出会いです。
普通は曲を聴くことで、そのバンドがどのようなバンドなのかを知ります。

ただ、知らないバンドの曲を聴いてもらうのは結構ハードルが高い。名前は聞いたことがあるけど、曲はちゃんと聴いたことがないようなバンドが、みなさん多くいると思います。曲を知らない=よく知らないバンドになり、曲を聴いてもらうまでは、好きか嫌いかを評価されるステージにも立てないのが通常です。

一方、グッズの良し悪しの評価は一瞬です。グッズは視覚情報なので、好きなグッズデザイン、好きな雰囲気の着用写真なら、一瞬で興味を惹かせることができます。
グッズを気に入れば、そこから、じゃあ曲も聴いてみようという流れにもなりやすくなります。

海外のメタルTで、「バンドのことを知らないのに着るな!」みたいな論争がありますが、個人的には、曲を知らなくてもデザインが好きなら気にせず着ても良いと思うし、むしろそのバンドのことを好きと言っても良いとさえ思っています。バンTもそのアーティストの表現の一部だからです。

海外メタルバンドの場合は、Tシャツから曲を聴いてみようとは中々なりにくいかもしれませんが、日本のバンドの場合は、もしバンTのデザインが気に入ったとしたら、曲も聞いてみようという気持ちにもなりやすいんじゃないでしょうか。

要は、バンドのことを知るためのきっかけを、1つ増やしてあげるイメージです。 Bandmerchでは、グッズ経由でのバンドとの出会いをより多く生み出していけるよう活動していきます。

── グッズからそのバンドに興味を持たせるという観点は面白いですね。フェスで物販に並んでいるときに、隣のバンドのグッズがオシャレで、どんなバンドなんだろうって気になるのも同じことですよね。

まさにそれです。そのグッズからの出会いをオンライン上でも作りたい感じです。

それと並行して、ライブをはじめとしたオフラインのイベントもたくさん企画していきたいです。ライブ来場者に会場でグッズを買ってもらえるような施策を考えていきます。そしてECでのグッズ購入者には、実際にライブに来てもらえるような施策も検討していきたいです。

── BandmerchのサイトにはMVが流れるページもありますが、これはどのような意味合いでしょう?
グッズからバンドの存在を知ってもらうことがメインなんですが、その流れで曲も聴いて欲しいという思いも強いので、そのためのページです。Bandmerchで掲載しているバンドのMVがランダムで流れます。曲が気に入ったらそこからすぐにグッズ情報が見られるような導線にしています。MVはサビから流れるようにしていて、TikTokと同じく縦スワイプで曲が切り替わります。

インタビュー後編はこちら

お問い合わせはこちら
Twitter DM Instagram DM でのラフなご相談も大歓迎です!